2021.9.1

工場建設の注意点|騒音・においなど周辺に配慮した事前対策が不可欠

この記事では、工場建設の際の注意点と建設中に避けては通れない騒音などの問題、その対策方法を紹介します。

企業にとって一大プロジェクトともいえる工場建設。

法令を遵守することはもちろんですが、プロジェクトを円滑に進めるために確認すべきこと、建設中に起こりやすい問題について知ることも大切です。

 

工場建設中は、何かと周辺住民への影響が出るもの。 建設する側は周辺住民からの理解を得るために、できる限りの対策をとることが重要であり、それが企業の信頼度向上にもつながります。

問題について対策し、スムーズに工場建設プロジェクトを進めたいと考える方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

目次

 

 

工場を建てる目的を確認しよう

 

工場建設には、必ず企業側の目的があります。 生産量の増強や新製品の展開、老朽化による新設、企業の遊休地の活用などです。

工場新設の目的を設定し、必要な仕様や機能を明確化してスタートすれば、途中で設計の変更や修正が生じるリスクを回避できます。

目的を明確にするには6W2H (Whenいつ・Whereどこで・Who誰が・Whom誰に・Whyなぜ・ What何を・Howどのように・ How muchいくら)の8つの確認事項に基づき考えることが有効です。

様々なビジネスで利用される工場ですが、今回は以下で紹介する工場に必要な仕様や特徴、考えられる注意点を紹介します。

 

 

食品工場

 

人が口にするものを製造するため、衛生的で安全な環境でなければいけません。 衛生管理を徹底し、製品の安全性を確保する対策であるHACCP(ハサップ)に沿った、汚染リスクを下げる設計が必要です。 害虫やネズミの侵入がしにくい土地選びや、異物混入が起こらないよう安全に配慮した設備の採用などの対策をしましょう。

 

 

化学・石油工場

 

化学工場やガス精製工場、石油精製工場などの化学製品を作り出す工場では、有害な原料や製品を扱うため、一つ間違いが起これば爆発・火災事故などの災害に発展する可能性があります。 そのため、危険物の漏出防止や外装や壁の耐火化、避難経路・爆発放散口の確保、消火設備の設置など、予防対策と被害削減対策をとった設計をする必要があります。

 

 

工場建設までの流れ

 

新たに工場を建設するまでには、主に以下のような手順で進められます。

    工場建設までの流れ

  1. 1.基本計画、業者の選定
  2. 2.基本設計、詳細設計
  3. 3.調達、発注
  4. 4.建設
  5. 5.官庁検査、立ち会い検査
  6. 6.試運転、引き渡し、本稼働
  7. 7.保守点検、設備のメンテンナンス

ここからは、工場建設までの流れについてひとつひとつの工程の詳細を見ていきましょう。

 

 

1.基本計画、業者の選定

 

工場を建てる目的、理由が明確になったら、さっそく基本計画や業者の選定を行います。 基本計画では、コンセプトを具体化したり、建築基準法などさまざまな法令の整合性をチェックしたりします。 業者選びについては、価格・実績・メンテナンスなども考慮して選択するのが大切です。

 

 

2.基本設計、詳細設計

 

基本計画をもとに、基本設計を作成します。 内容は、建物の構想図、レイアウト、フローシート、動線計画図、電気・計装概要図などです。 続けて、基本設計に照らし合わせて機器製作や施工のための具体的な詳細設計を作成します。 内容は、詳細配置図、詳細フローシート、配線図、配管図などです。 現場工事を安全かつ円滑に進めるためにも、詳細設計の工程は重要なポイントになります。

 

 

3.調達、発注

 

詳細設計が決まったら、資材、機材、部品などを手配します。 安全性やコストパフォーマンス、材料の仕入れ先の実績、将来的な部品交換の手配、保管期限についても考慮していきます。

 

 

4.建設

 

これまでの流れが完了したら、ようやく建設段階に入ります。 建設では、細やかな工程管理や建設が予定よりも遅延した場合の調整や対応が大切です。 施工管理者と発注担当者が常にコミュニケーションをとることで、円滑に建設工事が進められます。 工場の周りに対する騒音については、建設が開始時から発生するでしょう。 工場建設に関する騒音については、「騒音規制法」の規制基準が定められています。 この規制に反した場合は、ペナルティが課されることがありますので、建設前に防音対策を行い、違反のないように建設を進めるようにしましょう。

 

 

5.官庁検査、立ち会い検査

 

工場建設が進むと、建設、配管、電気、安全など、あらゆる設備に確認検査があります。 工事途中の段階で、機器の受け入れなどに立ち会い検査が行われることも少なくありません。

 

 

6.試運転、引き渡し、本稼働

 

検査が済んだら、設備や機器などの試運転を行います。 試運転では本稼働前に不安点がないか、確認作業が重要です。 その後、引き渡しとなり工事が完了、本稼働となります。

 

 

7.保守点検、設備のメンテンナンス

 

工場が稼働してからは、保守点検と設備のメンテナンスが必要となります。 傷みや劣化を発見するために、定期的な点検を行います。

 

 

工場建設時に予想される問題と対策方法

 

人々の暮らしになくてはならない食品や製品を生産するために必要な工場ですが、建設する際には騒音や異臭などの問題が起こるケースがあります。

これらの問題により近隣住民からクレームを受け、工場建設・稼働がスムーズに行えない事態に発展することも。

そうならないためにも、工場建設時に起こりうる問題や周辺にどのような影響を与えるのかを把握し、近隣住民に丁寧に説明する機会を設け、できる限りの対策を行うことが大切です。

 

次からは、工場建設時に予想される問題と対策方法を紹介します。

 

 

騒音問題とその対策

 

建設現場では機械音や作業音、トラックの出入りの音など騒音がつきものです。

業務を行う側からすると当たり前と感じることでも、現場周辺に住む人にとっては日常生活の中に騒音が入り込むことになり「仕事や勉強に支障をきたしている」「眠れない」「頭痛がする」などのクレームが生じることがあります。

 

各都道府県が指定した騒音規制法の対象エリアでの工事は、定められている音の大きさ、作業時間帯、日数、曜日などの基準を守る必要があり、基準以上の騒音を出した場合は防止方法の改善を勧告されます。

騒音規制法の基準を順守していたとしても苦情が出ることもあるでしょう。

そんな場合も「仕方がない」と開き直るわけにはいきません。

 

無音で建設工事を行うことは不可能ですが、あらかじめ挨拶をしておくことや騒音で迷惑をかけることの説明を行うこと、住民からのクレームを受けた際は受け止めて真摯に対策を行うなどの姿勢を見せることが大切です。

 

対策としては、作業時間の短縮や住民の迷惑にならない時間帯に作業を行う、防音ブースなどの騒音対策の製品を取り入れるなどがあります。

苦情が出る前に騒音防止対策をとっておきましょう。

 

特に工場で使われる装置は騒音が出やすいため、それぞれの対象に合った騒音対策を実施することが重要です。

下記の記事ではそれぞれの装置に合わせた防音方法を紹介していますので、もし使用する予定の装置があれば内容を参考になさってください。

 

排気ファンの防音方法について

研磨機の防音方法について

粉砕機の防音方法について

 

 

汚染問題とその対策

 

工場建設時には、大気汚染水質汚染土壌汚染などの公害問題を引き起こすことがあります。

 

大気汚染は工場の稼働中に出るばい煙によっても起こり、大気汚染防止法で排出が規制されています。

汚染物質を除去するには、気体中の粒子を分離除去する集じん装置や、排ガス中の硫黄酸化物や窒素酸化物を除去する排煙脱硫・排煙脱硝などの技術を導入することで対策ができます。

また、建設中の粉じんによっても大気汚染は起こりますが、これには公集じん機や防塵カバーなどが有効です。

 

水質汚染は、工場から出る排水が河川や海、地下水へ流出することで起こり、人々の暮らしや自然環境に悪影響が出ます。

水質汚濁防止法で定められている水質基準に基づき、有害物質を扱う工場では適切な排水処理を行う必要があります。

 

土壌汚染とは重金属や油などの物質が、環境や生活に害を与えるほど土壌に蓄積されている状態をいいます。

主な原因は、ガス・化学工場などの有害物質を扱う施設や排水施設からの漏出、廃棄物の埋め立てなどがあり、掘削作業時に土壌・地下水汚染物質が発見されるケースが多くあります。

有害物質が地下水まで拡散すると、近隣の土地まで被害が及ぶなどの問題もみられ、健康に影響を及ぼす可能性があります。

 

近年、環境問題への認識や健康への影響への懸念が強まり、土壌汚染対策法 では特定有害物質を取り扱う施設の建設基準が設定されています。

また企業等は自主的に建設予定地の土壌汚染状況を調査し、汚染が判明した場合は指定機関へ報告する必要があります。

調査の結果、指定基準を超えた場合は汚染物質の除去などの措置が命じられ、工期の遅延や中止になるケースがあります。

 

目に見えない問題であるため、信頼を損なうと風評被害につながりやすく、企業イメージの低下や建設業者が円滑に業務を進められないリスクが高くなります。

土壌汚染対策を円滑に行うためには近隣住民や自治体への説明を行ない、信頼関係を築くことが大切です。

汚染土壌の対策には、以下の5つの方法が存在します。

 

土壌汚染対策方法

  • ・汚染された土壌を掘り出し、新しい土壌を埋め戻す。汚染土壌は処理施設へ運び処分する
  • ・汚染土壌に薬剤を混合し、重金属を固形化して害の発生を防ぐ
  • ・微生物を使い油を分解し、油で汚染した土壌の浄化を行う
  • ・汚染した地下水を揚水して溶け込んだ有害物質を地上で浄化する
  • ・土の粒子が小さいほど汚染濃度が濃くなるため、粒子が小さい土と粗い土に分離し、安全な粗粒子の土のみ埋め戻す。減った分は新しい土で埋め戻す。
  • ・汚染土壌は処理施設で処分するか、洗浄して無害化する

 

 

におい問題とその対策

 

工場建設工事中は、においの問題が起こるケースもあります。 掘削作業中に発生する土壌のにおいや塗装作業中のシンナー臭、アスファルト臭などです。 とくに、暑い季節は窓を開けて過ごす家もあるため、苦情を受けやすいかもしれません。 「においがきつくて窓が開けられない」「においの成分によって体調不良を引き起こした」などのクレームが発生する恐れがあります。

 

環境省が定める悪臭防止法 では特定悪臭物質と臭気指数を指定しており、住民の生活が損なわれていると認定された場合、市町村から改善勧告が行われます。 騒音問題の際と同様に、挨拶や説明をしておくこと、工事の時間帯を考慮することが必要となります。 対策方法は、窓を開けることの多い夏場に塗装作業を行わない、消臭対策ができる機器の導入などがあります。

 

 

工場建設には説明と対策が必須

 

いかがでしたでしょうか? この記事を読んでいただくことで工場建設の注意点についてご理解いただけたと思います。 騒音やにおいなど、考えられる問題に対してはしっかりと事前対策をとり、工場建設を成功させましょう。

 

 

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TECCELL事業部営業部(代表)