2022.2.24防音のしくみ・方法
防音対策における防振と制振とは
工場では、日々さまざまな音が鳴り響いています。
なかでも、大きな機械が動くことによる振動で発生する音や、空調設備の音は独特な響き方をするため気になってしまうという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、機械の稼働音などに効果的な防音対策の方法である「防振」と「制振」について解説します。
現場での騒音を改善したいとお考えのご担当者様はぜひご覧ください。
防振とは
マンションの一室で子どもが元気に走り回っていると、下の階の部屋にドタドタと足音が響いてしまいます。
また、工場で大きな機械が稼働していると、部屋の外に壁や床を通して音が響いてくることがあります。
このように、建物の壁や床に加えられた衝撃が音となって響くことを防ぐ方法が「防振」です。
あらかじめ建物の床や壁に、防振材と呼ばれる衝撃を吸収する素材を設置しておくことで、衝撃を最小限に抑えてくれるという役割があります。
防振材として使用されるもの
振動の伝達を小さくする防振材には、プラスチックやゴムなど柔軟性のある素材がよく使われています。
建物の床や壁に衝撃が加えられたとき、防振材がクッションとなることでその衝撃を支え、床や壁に振動が直接伝わることを防いでくれるという仕組みです。
そのため、柔軟性のある素材を使うことで防振を行うことができるのです。
防振材を使用するメリット
防振材を使うことで、床や壁を通して聞こえてくる振動の響きを軽減させることができます。
たとえば、以下のような騒音にお困りの場合は防振材を使って防音対策を行うことで効果が得られます。
防振材を使った防音対策が有効な騒音の一例
- ・集合住宅における小さなお子さまの足音
- ・ダンス教室での足音
- ・工場での送風機やモーターなどの稼働音
- ・産業用プリンターや業務用冷蔵庫の振動
床や壁を伝って漏れる振動による騒音であれば、一般家庭から工場までさまざまな状況で防振材が役に立ちます。
防振材は、一般流通している防振マットなどを購入すれば簡単に導入できます。
しかし、大掛かりな機械を扱っている工場や特に騒音レベルの高いダンス教室などでは市販品では解決できない可能性もあるため、専門業者に施工を依頼する方法がおすすめです。
防振材では対処できないこと
一口に騒音といっても、音の種類にはさまざまなものがあります。
防振はあくまで、衝撃が加えられることによる振動の響きを軽減させるための方法です。
そのため、床や壁への衝撃以外の要因で発生する騒音には対処できません。
具体的な例を以下にまとめました。
防振材では対策ができない騒音の例
- ・話し声
- ・楽器を演奏する音
- ・機械から鳴る「ピーピー」といった電子音
- ・テレビやスピーカーから流れる音
- ・洗濯機や空調設備など、その物体自体が振動することにより発生する音
話し声や楽器の音、またスピーカーなどの電子機器から流れる音が漏れてくることを抑えるには、「吸音」および「遮音」という方法が効果的です。
また、洗濯機のようにその物体自体が振動することで発生する音は、次に紹介する「制振」を行うことで軽減ができます。
制振とは
制振は、「振動を軽減させる」という点において防振と少し似ていますが、対処できる音の種類や防音の仕組みは防振と異なります。
物体の振動によって伝わる音には、防振で対策できるような床や壁への衝撃から発生する音のほかにも、空調設備の機械など、その物体自体が振動することで発生する音もあります。
騒音の原因となっている物体そのものに、制振材を呼ばれる特殊な素材を貼り付け、振動を軽減させることで音を抑える方法が「制振」です。
防振は、あくまでも衝撃を受け止めて振動を軽減させる方法であるのに対し、制振では物体の振動そのものを抑え込みます。
楽器のトライアングルや鐘を鳴らす際に、直接手で触れていると音がほとんど響かなくなってしまう状態をイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。この状態における、楽器に直接触れている手と同じ役割を担っているのが制振材です。
トライアングルや鐘は、それ自体が振動することで音を発します。
その振動そのものを抑えてしまうことで、音が聞こえなくなるというわけです。
制振材として使用されるもの
振動することで音を発する物体に制振材を貼り付けるだけで、なぜ音を軽減できるのかというと、物体に加えられた振動を制振材が熱エネルギーに変換しているためです。
制振材では、アスファルトなどの硬い素材とゴムなどの柔らかい素材が組み合わされています。
その状態で衝撃が加えられることで制振材の表面で摩擦が起こり、摩擦が熱エネルギーに変換されるため、音がほとんど聞こえなくなるという仕組みです。
制振材を使用するメリット
制振材を使うことで、物体そのものの振動が原因で響く騒音を抑えることができます。
たとえば、以下のような騒音にお困りの場合は制振材を使って防音対策を行うことで効果が得られます。
制振材を使った防音対策が有効な騒音の一例
- ・車のドアの開閉音
- ・室外機のモーター音
- ・洗濯機やエアコンの稼働音
- ・デスクトップパソコンの冷却ファンの稼働音
制振材も防振材と同様に、個人利用から工場・オフィスでの法人利用など幅広いケースでの対応が可能です。
家具・家電などの比較的小さなものであれば市販の制振シートでも対処が可能ですが、対処したい騒音の規模が大きい場合は専門業者に施工してもらうとよいでしょう。
制振材では対処できないこと
本記事冒頭の「防振」についての項目でも触れましたが、制振材の場合も同様に、すべての騒音に対処できるわけではありません。
制振はあくまで、物体そのものが振動することによる騒音を防ぐための方法です。
そのため、ほかの要因で発生する騒音には対処できません。
制振材での対処が難しい具体的な例を以下にまとめました。
制振材では対策ができない騒音の例
- ・話し声
- ・楽器を演奏する音
- ・機械から鳴る「ピーピー」といった電子音
- ・テレビやスピーカーから流れる音
- ・足音など、床や壁を伝って聞こえる衝撃による騒音
特に、防振と制振はどちらも物体の振動にアプローチする防音対策の方法ですので、つい混同してしまいがちです。
それぞれの特性をしっかりと踏まえたうえで、今回行うべき防音対策は防振なのか制振なのか、それとも別の方法なのかをよく考えましょう。
防振と制振は、物体による衝撃や振動を軽減させることによる防音対策の方法
今回は、防振と制振それぞれの特徴や向いているケースなどを紹介しました。
それぞれよく似た方法ですが、防音を行う仕組みや向いているケースは異なります。
防音対策を行って、より大きな効果を得るためには、自分が対策したい音の種類とそれに適した方法を把握することが大切です。
本記事を参考に、自分が行うべき防音対策の方法はどれになるのかを押さえましょう。
また、より正確な騒音を把握するために作業環境測定を行うことも重要です。
下記の記事では、作業環境測定の重要性やその種類などを詳しく解説しています。
防音対策を実施する前に作業環境測定についても理解しておきたい方はご一読ください。
「どの方法で防音対策を行うべきかわからない」「自分で防音対策を行うのは大変そう」とお悩みであれば、防音対策の専門業者への依頼もおすすめです。
岐阜プラスチック工業では、工場やオフィスでの騒音対策をお考えの方のニーズに合わせた最適なご提案をしております。
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