2022.2.24

防音対策における吸音と遮音とは

工場では、プレス機や粉砕機などのように大きな音の出る機械を扱うため騒音はつきものです。

とはいえ、近隣住民のへの配慮や職場環境改善の面からも、ある程度の防音対策は行いたいものですよね。

 

そこで今回は、代表的な防音対策の手法である「吸音」と「遮音」について解説します。

現場での騒音を少しでも軽減したいとお考えのご担当者様はぜひご覧ください。

 

 

目次

 

 

音が伝わる仕組み

 

防音対策の方法について知る前に、まずは音が伝わる仕組みを理解しましょう。

 

そもそも音とは、物体の振動によって生まれるものです。

この振動が空気に伝わり、さらに耳に届くことで音が聞こえるという状態になります。

たとえば、鐘の音が鳴るときはまず鐘が振動し、その振動が空気に伝わって空気が振動しているということです。

 

また、物体から生まれる音は空気だけでなく、別の物体を通しても伝わります。

具体的な例としては、子どもが遊ぶ糸電話をイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。

 

糸電話では、話す側が発した声によって片方のコップが振動し、その振動が糸を通じてもう片方のコップに伝わります。

このとき、話を聞く側は耳をぴったりとコップにつけているため、音の振動は空気ではなく糸電話という物体を通しているということになります。

 

防音対策を行うときは、この空気や物体の振動を軽減させることで騒音を聞こえにくくできるということです。

 

 

音の反射とは

 

音は、光と同様に物体に当たると反射する性質があります。

お風呂やトンネルのように、狭くて壁が硬い場所では声や物音がよく響きますが、この現象はまさに音が反射していることによるものです。

 

具体的にはどのようなことが起きているのかというと、まず音は基本的に、遠くまでどんどん広がっていこうと進んでいきます。

しかし、トンネルのように比較的狭い場所だと、音はあまり広がることもないまますぐに壁にぶつかってしまいます。

さらに、コンクリートなどの硬い素材はすき間がなく、音がすり抜けることもできないため、壁にぶつかった音は跳ね返ってまた空気を振動させるということです。

 

この「音の反射」に関してもまた、防音対策を行ううえで外せないポイントとなります。

 

詳しくは次の項目から解説していきます。

 

 

吸音とは

 

吸音とは、特殊な素材を使って、文字通り音を吸収することで騒音を軽減させる防音対策方法のひとつです。

 

吸音材を使うことによってそもそもの音が吸収されるため、音の反射が起こりにくくなります。

そのため、吸音を行っている部屋のなかで音や声を発すると、ほとんど響かずに尚且つクリアに聞こえるようになるのです。

 

ちなみに、吸収された音、つまり空気や物体の振動はどのように消えていくのかというと、意外かもしれませんが熱エネルギーに変換されます。

とはいえ、触ると熱く感じるほどの熱エネルギーは生じないため、安心してお使いいただくことが可能です。

 

 

吸音材に使用されるもの

 

吸音材には、ミニソネックスやグラスウール、ウレタンフォームなどの細かな穴がたくさん空いている素材が使われます。

いずれも吸音を行う基本的な仕組みは一緒です。

 

細かな穴から音を吸収し、取り込んだ音が穴を通るときに摩擦が起こり、熱エネルギーに変換されることで音が小さくなるという仕組みです。

 

 

吸音材を使用するメリット

 

吸音材を使って防音対策を行うことで、「音や声が響いてしまって聞こえづらい」という状況を改善できます。

たとえば、会社の会議室で声が響いて発言内容が聞き取りづらい場合や、工場で音が響いて騒音となってしまっている場合には吸音材の使用がおすすめです。

 

 

吸音材では対処できないこと

 

吸音材はあくまでも部屋のなかの音の反射を防ぐためのものです。

そのため、音の反射以外の原因でお困りの場合には吸音材だけでは対処が難しいでしょう。

 

たとえば、室内の音漏れや、外の騒音が室内に聞こえてくるという状況を改善したい場合には吸音材では対処ができません。

 

 

遮音とは

 

遮音とは、文字通り、音を遮ることで外に漏れないようにするという仕組みの防音対策の方法です。

具体的にどのように音を遮っているのかというと、音を反射させることで壁の外などに音が突き抜けてしまうことを防いでいます。

 

そもそも、音というものは、たとえ密室のなかで発生するものであっても、壁やドアなどの物質をある程度通過してしまいます。

この、音が通過する現象がいわゆる「音漏れ」です。

 

しかし、石膏ボードやガラスのように、硬く密度の高い物質であれば音を通しにくいため、これらの素材を用いることで音を通過させず、内側で反射させることができます。

 

「吸音」は音を吸収して音の反射を軽減させる方法ですが、遮音は反対に音をあえて反射させるという方法なのです。

 

 

遮音材に使用されるもの

 

遮音材には、石膏ボードや鉄板、コンクリートなどの密度が高い素材が使われます。

これらの素材は比較的重量があり、個人で設置するには負担も大きいため、近い性質をもつ「遮音シート」と呼ばれるものも多く市販されています。

 

 

遮音材を使用するメリット

 

遮音材を使って防音対策を行うことで、「部屋の音が隣の部屋や廊下、家の外などに漏れてしまう」という状況を改善できます。

たとえば、プライバシーを保護するために会議室や社長室の防音性を高めたいという場合や、工場の機械音が外に漏れ出すことを改善したい場合は遮音材を取り入れましょう。

 

 

遮音材では対処できないこと

 

遮音材は、音を反射させて響かせることで音の通過を遮り、外に音が漏れないようにするために使うものです。

そのため、音漏れを防止する以外の目的には向いていません。

 

たとえば、「部屋のなかの音が響きやすいので、反響を軽減させたい」という場合に遮音材を使っても効果は見込めません。

それどころか、かえって音が響きやすくなってしまいます。

 

 

吸音材と遮音材を使って高い防音効果を得るためのポイント

 

ここまでで紹介してきたように、吸音と遮音は同じ防音対策の方法ではあるものの、それぞれの役割は全く異なります。

 

吸音は、音の反射を軽減させるために音を吸収する方法です。

対し、遮音は音漏れを軽減させるために音をあえて反射させる方法です。

そのため、高い防音効果を得るためには、吸音材と遮音材を両方使う必要があります。

 

まず、遮音材だけを使う状態では、外への音漏れこそ防ぐことができるものの、音が反射して響きやすくなってしまいます。

そこに吸音材を組み合わせることで、音を反射させたうえで吸収し、「外に音が漏れないうえに、部屋のなかでも音が響かない」という環境を作ることができるのです。

 

ただし、具体的にどのような素材を使えばよいのか、またどのように吸音材や遮音材を設置すればよいのかは環境によってまるで異なります。

より確実性の高い防音対策を行うためにはそのようなことを専門知識に基づいて判断する必要があるため、専門業者に相談することをおすすめします。

 

 

防音対策では吸音と遮音を組み合わせることが重要

 

今回は、防音対策における吸音と遮音とはそれぞれどのような役割をもつものなのかを詳しく解説しました。

 

吸音は、音を吸収することで音の反射、つまり音が響いてしまうことを防ぐ方法です。

そして遮音は、吸音とは反対にあえて音を反射させることで、外に音が漏れ出してしまうことを防ぐ方法です。

 

それぞれ役割が異なるため、より適切な防音対策を行うためには両者を組み合わせることをおすすめします。

 

 

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