2021.12.27工場騒音(機械騒音)対策
騒音規制法とは?基準や罰則を理解して効果的な騒音対策をしよう
工場や事業所、建設作業などにおいて、騒音が発生してしまうのは致し方ないことです。
しかし、著しい騒音に対して「騒音規制法」で基準が定められています。
工場や事業所などにとっては無視できない法律で、内容をしっかり理解しておかなければならないでしょう。
今回の記事では、騒音規制法の内容や基準、罰則、騒音対策の重要性などについて解説しています。
特に、工場や事業所に関して掘り下げた内容となっています。
「騒音規制法の騒音値はどのように決まっている?」「騒音規制法にある特定施設ってどんな施設?」などの疑問をお持ちの方も、きっと答えにたどり着くはず。
ぜひ参考にしてみてください。
騒音規制法とは?
騒音規制法とは、工場や事業所、建設作業から発生する騒音を規制する法律です。
加えて、自動車騒音にも許容限度を設けています。
騒音の許容限度を定め、工場や建設作業場、道路などの周囲で生活する人々の環境や健康を守ることが目的です。
そのため、著しい騒音を伴う施設は、市町村長や特別区長に届出をする義務があるのです。
また、周辺住民から相談や苦情を受けた際に対応する基準としても、騒音規制法が用いられます。
周辺住民の生活環境が阻害され、騒音が許容限度を超えていると判断した場合、工場や事業所などへの改善要請が行われます。
騒音規制法の対象範囲
規制の基準や対象は、環境大臣や環境省令などによって定められ、工場と事業所、建設作業、自動車のそれぞれで詳細が決められています。
また、騒音の大きさだけでなく立地する地域ごとに区分され、各区域の状況によって騒音値(dB)の許容限度も異なるのです。
区域については、都道府県の知事や市町村長などによって指定されます。
その際、住宅街や学校、病院などがあるかどうか、周辺の状況が加味されます。
工場と事業場の対象範囲
工場と事業場では、金属加工機や送風機、破砕機といった大きな音が発生する施設が対象です。
指定区域は4つに分けられています。
- 工場・事業所の指定区域
- ・第1種区域:良好な生活環境を守るため、特に静かな環境を保たなければならない区域
- ・第2種区域:住宅用の区域で、静かな環境を保つことが必要
- ・第3種区域:住宅及び商業用、工業用の区域であり、住民の生活環境を守るため騒音対策が必要
- ・第4種区域:工業などがメインの区域で、区域内の住民の生活環境悪化を防止するため、著しい騒音の対策が必要
各区域によって、規制範囲の騒音値が細かく定められています。
建設作業の対象範囲
建設作業においては、くい打機やブルドーザーなどを使用し、著しい騒音が発生する作業が対象です。
指定区域は2つに分けられています。
- 建設作業の指定区域
- ・第1号区域:良好な生活環境を守るため、特に静かな環境を保たなければならない区域
- ・第2号区域:指定された区域のうち、第1号区域を除く
これらの区域区分に加え、作業時間帯や作業日数、騒音の大きさなどの範囲が定められています。
自動車騒音の対象範囲
自動車騒音においては、自動車単体から発生する騒音と、道路から聞こえる自動車騒音が対象です。
指定区域は3つに分けられています。
- 自動車騒音の指定区域
- ・a区域:住宅専用の区域
- ・b区域:住宅がメインの区域
- ・c区域:住宅及び商業用、工業用などの区域
これらの区域区分に加え、車線数や時間帯などで騒音値の許容限度が決められているのです。
工場・事業場に対する規制の詳細
工場や事業所では、指定区域内で騒音値が大きい機械を設置している施設を「特定施設」に定められています。
また、前述したように工場や事業所の指定区域は4つに分けられ、それぞれの区域で騒音値の許容限度が異なります。
ここでは、騒音規制法における特定施設や、指定区域での騒音値の許容限度について詳しく見ていきましょう。
騒音規制法における特定施設とは
特定施設は、大きく分けて以下の11種類に分類されます。
- 特定施設の種類
- ・金属加工機械
- ・空気圧縮機/送風機(原動機の定格出力が7.5kW以上)
- ・破砕機/摩砕機/ふるい及び分級機(土石または鉱物用、原動機の定格出力が7.5kW以上)
- ・織機(原動機を用いるもの)
- ・建設用資材製造機械
- ・穀物用製粉機(ロール式、原動機の定格出力が7.5kW以上)
- ・刻材加工機械
- ・抄紙機
- ・印刷機械(原動機を用いるもの)
- ・合成樹脂用射出成形機
- ・鋳型造型機(ジョルト式)
これらの施設が設置してある場合、特定施設となるのです。
具体的に、施設が特定施設に該当しているかは、市町村や特別区に問い合わせてみるのが確実でしょう。
指定区域内での騒音値の許容限度
4つの区域で騒音値の許容限度が異なり、さらに時間帯によっても変わります。
詳しい騒音値の範囲については、以下の通りです。
- 騒音値の規制範囲
- ・第1種区域…昼間:45~50dB、朝・夕:40~45dB、夜間:40~45dB
- ・第2種区域…昼間:50~60dB、朝・夕:45~50dB、夜間:40~50dB
- ・第3種区域…昼間:60~65dB、朝・夕:55~65dB、夜間:50~55dB
- ・第4種区域…昼間:65~70dB、朝・夕:60~70dB、夜間:55~65dB
騒音値の目安としては、40dBが図書館内、50dBがエアコンの室外機、60dBが普通の会話、70dBが高速道路走行中の自動車内くらいです。
また、第2~4種区域内において、学校や図書館、病院などがある場合は、都道府県知事や市町村長が5dB減じることが可能です。
※学校などの敷地の周囲50m(およそ)範囲内
騒音値の計測場所
それぞれの区域で、遵守すべき騒音値の許容限度は分かりました。
では、工場や事業所のどのポイントで計測した騒音値が適用されるのでしょうか?
答えは、「敷地の境界線」です。
通常は、敷地の境界線上の高さ1.2~1.5mのポイントで計測します。
ただし、騒音に対する苦情がある場合は、騒音の発生源の位置や騒音が聞こえる地点によって計測ポイントが変わり、事例ごと合理的に判断されます。
ケースによっては、騒音が苦情となっている周辺で計測することも。
また、特定施設単体の騒音ではなく、工場や事業所全体の騒音を計測します。
騒音値は、合算した総合的な数値で遵守しなければなりません。
騒音規制法の罰則とは?
騒音規制法に違反すると、懲役や罰金が科せられる場合があります。
主に、届出の怠りや不備、改善命令に従わないといったケースが該当します。
届出不備による罰則
指定地域内で工場や事業所内に特定施設を設置する場合、市町村長や特別区長に届出なければなりません。
期限は、稼働開始の30日前までです。
届出なかったり内容に虚偽があったりと、届出に不備がある場合、5万円以下の罰金が科せられます。
届出の内容は、代表者氏名や工場などの名称、所在地、特定施設の数などが挙げられます。
また、騒音防止の方法についても併せて提示する必要もあるのです。
改善命令違反による罰則
市町村長や特別区長からの改善命令に従わない場合にも、罰則が科せられます。
罰則の内容は、1年以下の懲役、または10万円以下の罰金です。
騒音規制法の基準を超え、周辺住民の生活や健康が脅かされていると認められると、市町村長や特別区長は工場などに対して改善勧告を行います。
工場や事業所は、改善勧告に従って騒音対策をしなければなりません。
従わない場合は、改善命令を下すことが可能です。
改善命令にも違反した場合、罰則が科せられるのです。
遵守するために騒音対策をすることが重要
ここまでで、騒音基準法の内容や遵守すべき騒音値、違反した場合の罰則について解説してきました。
騒音規制法に従うことはもちろん、周辺住民の生活環境や健康を守るためにも、騒音対策が重要です。
届出の際にも騒音の防止方法を提示する必要があり、規制基準に適合していない場合は計画変更や特定施設の使用方法の変更なども求められます。
騒音対策とひとことで言ってもさまざまな方法がありますが、騒音が発生している施設に対して防音するのがおすすめです。
工場や事業所の周りに防音壁を設置するのもひとつの手ですが、建設費用が高額になってしまう恐れも。
それぞれの騒音発生源に防音対策を施すことで、コストダウンと同時に工場や事業所内の騒音軽減にもつながるでしょう。
例えば、工場内のプレス機や屋外の排気ファンなどの周囲を防音材で囲うといった対策が挙げられます。
使用する防音材は、遮音材と吸音材を組み合わせるのがベターです。
吸音材が加わることで、反響音を抑制し、出入り口などの開口部があっても外部への音漏れを軽減してくれます。
設備を防音材で囲うといっても、人が出入りしないと作業ができず、完全に囲うことができないケースも。そのため、吸音材が騒音対策のカギを握っているのです。
また、騒音対策には、騒音値だけでなく周波数の分析も大切です。
音の質によって、対策方法も変わってきます。
専門業者による現地調査を依頼し、適切な騒音対策を行いましょう。
騒音規制法について理解を深め効果的な騒音対策をしよう
いかがでしたでしょうか?
騒音規制法の内容や基準、罰則などについて理解を深められたのではないかと思います。
効果的な騒音対策を講じることで、法令の遵守だけでなく、周辺住民への配慮にもつながるでしょう。
今回の記事が、騒音規制法についての知識の蓄積になりましたら幸いです。
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