2022.2.24工場騒音(機械騒音)対策
騒音対策における作業環境測定とは?
工場やオフィスなどで発生する騒音が気になって、業務に集中できないという方もいらっしゃることでしょう。
騒音を抑えるために騒音対策を施す際には、作業環境測定といわれる測定を行うことがありますが、この作業環境測定がどういうものなのかをご存じでしょうか。
本記事では、騒音対策における作業環境測定の重要性や種類を紹介します。
工場やオフィスの騒音対策を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
作業環境測定とは?
作業環境測定という言葉を聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれません。
作業環境測定とは、安全な職場環境や作業環境を保つために行う測定・評価のことです。
労働者の健康障害を防止するため、事業者は労働者の作業環境を良好な状態に保たなければなりません。
作業環境を快適なものにすることで、労働者は健康かつ安心して働くことができるようになります。
また、それに伴い労働意欲が向上することで、生産性も向上する効果が期待できます。
労働安全衛生規則における騒音とは?
騒音とは、そもそもどのような音を意味するのでしょうか。
ここからは、騒音と見なされる音の定義や、騒音測定の対象となる主な作業場などを紹介します。
騒音とは?
騒音とは、人の健康や生活環境によくない影響を与える音のことをいいます。
不愉快な高音や低音が騒音に定義されることもありますが、一般的には聴覚に異常が生じるような大きな音が騒音と定義されやすいです。
大きなボリュームの騒音を聞き続けると、聴覚器官が損傷することで“騒音性難聴”と呼ばれる難聴の症状が出てしまうことがあります。
また、騒音による強いストレスにより、慢性的な頭痛や不眠、うつ病などの症状が出る場合もあります。
このような健康被害を起こさないためにも、騒音を抑える対策を講じなければならないのです。
騒音測定の対象となる主な作業場
労働安全衛生規則第588条に基づき、騒音が発生しやすい作業場では、定期的に騒音のレベルを測定しなければなりません。
騒音の測定義務がある主な作業場は以下のとおりです。
騒音の測定義務がある主な作業場
- ・鋲打ち機、はつり機、鋳物の型込機などを取り扱う屋内作業場
- ・ロール機、圧延機による金属の圧延や伸線などを行う屋内作業場
- ・タンブラーによる金属製品の研磨や砂落しなどを行う屋内作業場
- ・動力によりドラム缶を洗浄する業務を行う屋内作業場
- ・チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場
- ・ハンマーで金属の打撃や成型を行う作業場
- ・高圧水で鋼管の検査を行う作業場
上記はあくまでも一例なので、ほかにも多くの作業場が指定されています。
工場や工事現場の騒音測定の結果に問題があった場合は?
騒音測定の結果は、「第1管理区分」「第2管理区分」「第3管理区分」の3つに分類されており、第3管理区分がもっとも騒音が大きい区分になっています。
第3管理区分の定義については、90dB以上の音が常時発生していることが目安とされています。
測定結果が第3管理区分の場合は、防音保護具の着用や機器の防音対策をしなければなりません。
また、第2管理区分の場合でも、必要に応じて防音保護具の着用を行って騒音を減らすための工夫を取り入れる必要があります。
作業環境測定を行う作業場と測定の種類
専門的な機械や材料などを扱う作業場では、騒音以外にもさまざまな健康への影響が想定されます。
そのため、労働安全衛生規則をはじめとするさまざまな法律で、作業場の環境によって騒音を含む13もの項目の作業環境測定が義務付けられています。
作業環境測定を行う主な作業場と測定の種類は以下のとおりです。
作業場①:土石や鉱物などを発散する屋内作業場
土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんなどを発散する屋内作業場では、空気中の濃度および粉じん中の遊離けい酸含有率を測定する必要があります。
これを義務付けている粉じん障害防止規則とは、粉じんにさらされる労働者の健康障害を防止するために定められた規則のことです。
測定回数は年2回で、記録年数は7年と定められています。
作業場②:気温や湿気が高い屋内作業場
気温が著しく高い・低いまたは湿気が高い屋内作業場では、気温や湿度、ふく射熱を測定する必要があります。
これを義務付けている労働安全衛生規則とは、労働の安全衛生についての基準を定めた規則のことです。
測定回数は半月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場③:騒音が発生する作業場
聴覚に影響を与える恐れがあるような騒音が発生する作業場では、騒音レベルの時間平均値である等価騒音レベルを測定します。
測定回数は6月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場④:炭酸ガスが停滞する坑内の作業場
炭酸ガスが停滞する、または停滞する可能性がある坑内の作業場では、坑内の炭酸ガスの濃度を測定する必要があります。
測定回数は1月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場⑤:気温が高い坑内の作業場
坑内の気温が28℃を超える、または28℃を超える可能性がある作業場では、坑内の気温を測定する必要があります。
測定回数は半月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場⑥:通気設備がある坑内の作業場
通気設備がある坑内の作業場では、一定時間に通る空気の量である坑内の通気量を測定する必要があります。
測定回数は半月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場⑦:中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物内の空間
中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物内の空間が、事務所に使われている場合は、一酸化炭素と二酸化炭素の含有率、外気温、相対湿度などを測定する必要があります。
測定回数は2月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場⑧:放射線業務を行う作業場
放射線業務を行う作業場では、外部放射線による線量当量率や空気中の放射性物質の濃度を測定する必要があります。
放射線業務を行う作業場とは、具体的には「放射性物質取扱作業室」「事故由来廃棄物等取扱施設」「坑内における核原料物質の掘採の業務を行う作業場」などを指します。
これを義務付けている電離放射線障害防止規則とは、労働安全衛生法に基づき定められた電離放射線防止の安全基準を定めた規則のことです。
外部放射線による線量当量率の測定回数は1月以内ごとに1回、記録年数は5年と定められています。
また、空気中の放射性物質の濃度の測定回数も1月以内ごとに1回ですが、こちらの記録年数は5年と定められています。
作業場⑨:特定化学物質を製造、または取り扱う屋内作業場
特定化学物質を製造、または取り扱う屋内作業場等では、第1類物質、または第2類物質の空気中の濃度を測定する必要があります。
これを義務付けている特定化学物質障害予防規則とは、特定化学物質の安全基準を定めた規則のことです。
測定回数はごとに6月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
ただし、特別管理物質については、記録年数は30年間と定められています。
作業場⑩:特定有機溶剤混合物を製造、または取り扱う屋内作業場
特定有機溶剤混合物を製造、または取り扱う屋内作業場では、空気中の特別有機溶剤および有機溶剤の濃度を測定する必要があります。
測定回数は6月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場⑪:石綿を取り扱う、または石綿分析用試料を製造する屋内作業場
石綿を試験研究のために取り扱う、または石綿分析用試料等を製造する屋内作業場では石綿の空気中における濃度を測定する必要があります。
これを義務付けている石綿障害予防規則とは、石綿の安全な取扱と障害予防についての基準を定めた規則のことです。
測定回数は6月以内ごとに1回で、記録年数は40年と定められています。
作業場⑫:鉛業務を行う屋内作業場
一定の鉛業務を行う屋内作業場では、空気中の鉛の濃度を測定する必要があります。
これを義務付けている鉛中毒予防規則とは、労働安全衛生法に基づいて、鉛の安全基準を定めた規則のことです。
測定回数は1年以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業場⑬:酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の作業場
酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の作業場では、空気中の酸素や硫化水素の濃度を測定する必要があります。
これを義務付けている酸素欠乏症等防止規則とは、労働安全衛生法に基づいて、酸素欠乏症防止するために定めた規則のことです。
作業開始前等ごとに測定するようになっていて、記録年数は3年と定められています。
作業場⑭:機溶剤を製造、または取り扱う屋内作業場
機溶剤を製造、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場では、当該有機溶剤の濃度を測定する必要があります。
これを義務付けている有機溶剤中毒予防規則とは、労働安全衛生法に基づいて、有機溶剤の安全基準を定めた規則のことです。
測定回数は6月以内ごとに1回で、記録年数は3年と定められています。
作業環境測定で騒音を確認したうえで騒音対策を実施しよう
いかがでしたでしょうか。
工場をはじめとしたさまざまな作業場で発生する騒音は、放置することで騒音性難聴や頭痛といった健康被害体調不良を起こす場合があります。
そのため、作業環境測定によって騒音の状況が確認できたら、速やかに騒音対策を行うようにしましょう。
騒音対策を行う際には騒音の性質に合わせて、効果的な方法を選択することが大切です。
下記の記事では、2種類の騒音の違いと防音方法を紹介しています。
具体的な対策方法を知りたい方は参考になさってください。
騒音が発生しやすい環境では、騒音を抑えるために本格的な騒音対策が必要になるので、プロである専門業者に相談することをおすすめします。
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